[全日本駅伝企画vol.3]狙うは地元での王座奪還―「平成の常勝軍団」復活のキーマン…駒澤大・下史典

全日本大学駅伝企画・第3弾は、駒澤大学。

開催地出身選手の"凱旋レース"ともいえるこの駅伝で、三重県出身の下史典(経4)が、地元の応援にこたえる力走を誓う。


三重県・伊賀白鳳高出身。

3年次には、全国高校総体5000m日本人トップ(6着、14′18″16)、都大路1区・区間賞(29′39″)など、数々の実績を積み重ねた下。


「あの時を思い出すとやはり自分でも楽しかったので、最後の学年になってもう1回あの感じを味わいたいという気持ちも強くなった」

鳴り物入りで駒大陸上部の門を叩いてから早4年、ラストイヤーに懸ける思いが滲んだ言葉だった。


5000m、10000m共に自己ベストを更新したのは、大学2年次が最後。

「その時(自己ベストを出したレース)の走っている感覚もあまり良くなかった」と語る。


高校時代から苦慮してきた"走りの改良"は、一筋縄ではいかない難題だった。

大学に入り、大八木弘明監督(60)から「腕ふりが小さいことで足の筋肉を余計に使ってしまっている」と分析を受けたが、意識を持っていくと逆に上半身が固くなってしまうという。


ストライド(歩幅)を大きくするのではなく、ピッチ走法を取り入れるなど解決策を模索し続けてきた。

最近は動きづくりから意識し、「徐々に走っている感覚が良くなってきているので、秋以降につながるという面ではいい方向にいっている」と少しずつ形になりつつある。


夏合宿後1発目となる10000mのレース(日体大記録会)では、組3着(29’31”48)でフィニッシュ。

タイムに納得はいかなかったものの、走りの感触に確かな手ごたえを感じた。


自分の感覚を探りながら練習を積み重ねてきた4年間。

試行錯誤のプロセスは順風満帆とはいかなかったが、監督・コーチはその努力に大きな信頼を寄せている。


地元開催となる全日本大学駅伝は、1年目こそつなぎ区間とされる5区だったが、2年目、3年目は4区と主要区間を任された。

「期待されているという自覚、責任感が芽生えた大会」と、特別な思い入れを持っている。


今年は、前半区間の距離短縮に伴い"スピード駅伝化"が予測されるが、「自分たちはスプリント能力や短い距離でのスピードはないかもしれないが、速いスピードで押していくスタミナは夏合宿で培ってきた」と自信をのぞかせた。


今年度の駅伝シーズンは、箱根駅伝予選会・全日本・箱根で"2.5冠"を掲げる駒大。

最上級生の立場から、「誰かが走れば『自分もやってやる』という気持ちが強く芽生える人が多いので、"いい連鎖"をさせることが大事かなと思う」と、冷静に迫る勝負を見据えていた。


そして迎えた10月13日。

箱根駅伝予選会(今年から距離がハーフマラソンコースに変更)で上位10人が30位以内に入るという、ぶっちぎりのトップ通過を果たす。

下をはじめ4年生で集団走をけん引し、出場した12人全員が64分切りを達成。

うち9人が自己ベストを更新し、"いい連鎖"が巻き起こった。

(前列左から3番目で「男だろ!」を完コピする下)


「期待してもらっている分全然結果で返せていないので、残り半年、特に自分は駅伝が好きなのでそこで恩返ししたい」

地元の応援を背に「常勝軍団」復活の立役者となるか。

ラストイヤーの決意を胸に、平成最後の伊勢路を駆ける。

(駒大スポーツ新聞編集部・奥田葉月)


~はみだしQ&A~

Q.こんな声援をもらえると嬉しい!という言葉は

A. 過去3年間もたくさん応援してもらって、1番嬉しいのはやっぱり名前を呼んでもらうこと。

「あぁ自分のことを応援してくれている人なのかな」というのがあって、期待されている分、結果を残したいという気持ちが走っている間にもどんどん増していくので、名前を呼んでもらうと嬉しいなと思います。


PROFILE

しも・ふみのり/1996年6月14日、三重県亀山市生まれ。174cm・56kg。経済学部経済学科4年。中村匠吾(15年卒、現・富士通)、西山雄介(17年卒、現・トヨタ自動車)ら伊賀白鳳高歴代エースの活躍を追い、駒大へ。全日本大学駅伝には学年で唯一、1年次から出場を果たすなど主力選手としてチームを支えてきた。

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